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![]() 学生に作問をさせながら自律性を高めるWBTシステム高木 正則、田中 充、勅使河原 可海:「学生による問題作成およびその相互評価を可能とする強調学習WBTシステム」 情報処理学会論文誌, 第48巻第3号, pp1532-1545, 2007年3月 まえがき e-Learning WORLD 2009 の展示コーナーで創価大学の説明者から「学生に問題を作らせるシステムです」と声をかけられた。聞いてみたところなかなかおもしろそうなので、別途、創価大学工学部情報システム工学科勅使河原研究室を訪問して担当の高木正則助教に詳しく教えてもらった。頭記の論文に基づいて、システムの概要を紹介する。 システム導入の狙い この取り組みは平成19年の文科省の現代GPに選ばれて、創価大学の全学で実施している。教育・学習活動支援センターのホームページ(http://wbt.soka.ac.jp/ ログインしなくてもサブメニューで見ることができる)の解説には、その狙いを次のように述べている。 第一は、学生一人ひとりに自律的な学習態度を持たせることである。さらに、思考力とコミュニケーション能力育成を目標にしている。 具体的に求める成果・効果は、次の3点である。 (1) 教員-学生間ならびに学生同士のインタラクティブ性の向上 (2) 自律学習への誘導 (3) ICT活用教育の導入に必要なコンテンツ不足の解消とコンテンツ作成時間軽減の実現 WBTシステムを使った授業の流れ スタンダードタイプ(CollabTest)を用いた授業の流れを追ってみよう(図1)。 (1) 教師はあらかじめ学生を数人のグループに分ける。 (2) 学生は講義内容の中から出題単元を検討し、4択の問題文を作成する。ここでは単に問題文とその解答を作るだけでなく、問題のキーワード、選択肢、解説もあわせて作成する。 (3) 学生は同じグループメンバーが作成した問題にコメントを投稿し、学生同士で問題を相互に評価する。また、コメントを受け、問題の修正が必要であれば修正作業を行い、問題の完成度を高める。さらに教師は各問題のレビュー状況を閲覧し、必要に応じてコメントを投稿する。(レビュー機能) (4) 学生は自分が作成した問題に誤りがないことを確認し、教師に問題を送信する。 (5) 教師は学生から送信されてきた問題がオンラインテストに出題可能かどうかを評価し、必要であればコメントを投稿する。 (6) 教師は学生から送信されてきた問題または教師自身が作成した問題、過去の講義で作成された問題の中からオンラインテストに出題する問題を選択し、テストを作成、公開する。 (7) 学生は、公開されたオンラインテストに解答する。 (8) システムの利用を促進するため、問題送信、コメント投稿、オンラインテスト登録、オンラインテスト解答のアクションに対して、学生にポイントが与えられる。 写真は、システムを使った指導風景である。 効果の確認 この取り組みは、すでに平成14年度から実験的にシステム開発と授業内で教育実践がおこなわれ、19年度からは1年生の大半が利用する共通科目の講義で実施している。この授業方法の効果については、頭記の論文に詳しく述べられているが、問題作成と解答による理解度の向上、レビュー機能によるコミュニケーション促進、コメントのインタラクションによる学習意欲の向上などが確認されたとのことである。さらに、教員が自ら問題を作成する時間に比べて、学生が作成する問題を指導しながら完成させる時間の方が3分の1程度に短縮されるという効率向上のデータもあり、まさに一石二鳥である。 課題として、当然のことであるが、スタンダードタイプでは、選択型のテストであるため、思考力を磨く科目には向いていない。そこで、ディスカッション型の問題を扱うシステムが既に開発されているとのことであった。 感想 オンラインテストを実にうまく使っていると思う。 大きなポイントが3つある。第1は問題を作るという過程で自然に勉強せざるを得ない状況を作っていることで、自分の経験でも実感できる。 第2には、グループレビューで協調しながら問題を完成させるプロセスである。PBL(Project Based Learning)の効果と共通した、重要な要素があると思う。また、文章作成の訓練にもなり、就職後に役に立つ。 第3には、正式なテストに採用されることで達成感が得られることであろう。一連のプロセスで行われる教員とのやり取りは、学生に強い影響を与えるであろう。 この方法がうまくいっている最大の理由は、システム任せにせず、教員やTA(Teaching Assistant)の目が各段階で届いていて、必要なアクションが取られていることだと思う。また、全学的な体制が作られているため、関係する教員の連携が取られ、一部の教員に過度な負担がかからないように工夫していることも、実施面ではすばらしいことだと思う。 自律的な学習意欲を持たせること、思考力・コミュニケーション能力の育成等は、多人数教育において特に問題とされながら、なかなか効果的な方法がない難題である。最初はそんなにうまい話があるのかという思いであったが、着実に効果を上げていることをお聞きして、敬服してしまった次第である。 一つだけ気になることがある。この方法でもっとも成果を上げるのは当初から意欲が高い学生で、意欲が低い学生との差がますます大きくなりそうな気がして高木先生にお聞きしたところ、やはりその傾向はあるとのことであった。 教育とはそう簡単なものではない。 なお、高木正則氏および論文共著者の田中充氏は、本コンソーシアムの会員である。 (実践的ソフトウェア教育コンソーシアム 事務局長 二瓶文博) ![]() ![]() |