|
ホーム>
![]() FDキャンプ2011報告FD キャンプ2011 での新たな議論と成果から コーディネータ 神沼靖子 はじめに 今年も、産官学が一同に会して実践的教育を考える集い“FD キャンプ2011”が 9/1~9/2に開催された。参加者は、大学の専任教員、非常勤講師、企業の人材育成講師、人材開発部門の関係者、など多彩であった。 FD(faculty development)キャンプは 6 回目を数えたが、意見交換の場へと着実に歩んできたような手ごたえを感じている。1 日目の 10 時から2 日目の 16 時まで、グループ討議や全体討論を通して参加者が相互に学びあうというスタイルは当初から変わっていない。産と官と学を超えて、実践的な教育や人材育成に関わる現場の課題を解決しようという思いは、回を重ねるにつれてますます深まっている。今回のキャンプでも、主催者の期待を越えた議論が展開できた。この報告を兼ねて、幾つかの印象的な議論を紹介したい。 テーマの設定 これまで続けてきた産学連携やPBL の議論が深まったことから、新たな話題にも取り組もうということになった。“前年度の参加者からの気づきやアンケート”、“P-sec が取り組んでいるWG の活動”、“中教審の「教育をめぐる現状の課題(H20)」”などを視野に入れて、“要求分析の教え方・学び方”と“キャリア教育・メンタルケア・ストレス軽減”のテーマが選ばれ、プログラム(FD キャンプ2011 プログラム参照)は、グループ討議、全体討論、講演、報告の枠組みで構成された。以上のテーマとその意図、及び関連資料の紹介は、セッション開始前の説明で行われた。 [グループ討議の議題] は、“要求分析または要求獲得のための科目設計”、“講義または実習を支援する教育素材として何があればよいか”に絞られた。これらを発展させて各グループからの報告と全体討論が組まれた。[講演] は、“キャリアデザイン・就活支援とその背景にあるもの(「キャリアデザインと就活支援」資料参照)”、“ストレス対応とメンタルケア(「メンタルヘルスケアの現状と実際の対応事例」資料参照)”の2件が取り上げられ、その延長線上に“現状打開としてできること”と題した全体討議が組まれた。[報告] “人材白書から読める現状の分析(「企業が求める人材像」資料参照)”では、いろいろな白書から何が読めるかについての解説があり、参加者の情報共有ができた。 グループ討議の経緯 グループ討議の背景には“社会の信頼に応える学士課程教育の実現”、“大学教育の質の向上と保証”、“産学連携による取り組み支援”などの課題があり、議論では教育力向上の具体策について知恵を出し合った。“要求の分析・獲得のためのカリキュラム”は新たな取り組みであり、“要求分析を如何に教えるか?(グループA)”、および“要求獲得は如何に行うか?(グループB)”についての議論が一歩前進したことが報告された。継続課題である“実践的教育支援として共有すべき教材とは?(グループC)”と、“実務経験がなくても理解できる教材とは?(グループD)”の報告も含めて、さらに時間をかけた全体討論が行われている。産と学との思いのギャップが少しは解消できただろうか。 グループA とグループB の活動では、課題を理解する前提の議論と、課題を解決する科目設計・シラバス作成の演習が実施されている。グループC とグループD の進め方も同様である。以下では、それぞれの経緯を簡単に紹介する。 グループA の討議 学科を問わず利用できる要求分析科目の設計と題して、“要求分析を如何に教えるか?について検討し、関係するラーニングユニット(LU)の抽出と授業計画案(シラバス)をまとめている。 科目設計に先立つ議論では、“受講生の前提知識”、“ユーザ企業とベンダー企業との違いと提案依頼書(RFP)の位置づけ”、“RFP に基づいて開発することの意味”、“要求分析活動と IS の捉え方・IS ライフサイクル・IS 開発プロセスの関係”、“ドメインの知識の扱い方”、“講義・演習の併用効果”など、授業設計に関連する基本事項に広く言及している。 成果物は(要求分析科目の設計参照)に掲載している。シラバス作成では、予め配布した資料“LU、ISBOK(IS の知識体系)”が利用されている。 グループA への参加者は、8 名(産業界から4名、大学から2名、その他から2名)で、座長は宮川裕之氏(青山学院大)がつとめた。 グループB の討議 課題は“企業等が必要としている要求獲得コースを設計すること”であった。コース設計に先立って、“要求獲得の範囲”、“学習者の特性”、“教育者の要件”に関して、思いを共有している。 要求獲得の範囲を明確にするために要求の流れを示し、“ビジネス要求⇒システム要求”に焦点を当てて(要求の範囲の明示化参照)、対象とするステークホルダ・学習者について議論した結果、学部・学科(文系/理工系)を問わず企業現場で 2-3 年の経験をした学習者(ICT 企業の担当 SE で中級レベル相当)を対象とすることになった。科目の目標を“機能要件、非機能要件、コンプライアンス、個人情報保護、セキュリティ、環境問題、費用対効果について理解すること”におき、“要求獲得の基礎”科目と命名した。評価は“数年後にどのように成長したかによって、組織におけるキャリアが変わっていくことで確認できる”としている。資料を基に LU を選択し、科目の概要をまとめている(要求獲得の基礎参照)。 なお、“初級・上級の ICT 企業の担当 SE、ユーザ企業の担当 SE、ビジネス企画部門の担当者”のカリキュラム開発も必要であること、これらの研修を行う教育者の育成について検討する必要があることを指摘している。今後の継続課題としたい。 以上の議論には、(産業界から7 名、大学等から3 名、その他から3 名の)13 名が参加し、原潔氏(日本ユニシス(株))が座長をつとめた。 グループC の討議 課題は“講義支援としての教育素材のあり方”で、学科を問わず共有したい素材とその取り上げ方について議論した。大学側からは、「RFP からシステム完成までの過程で得られる中間成果物やそのプロセスがわかる本物の事例が欲しい」という要望があり、共有できる可能性について、いろいろな側面から検討された。 過去の成功事例や失敗事例をオープンにすることの難しさが浮き彫りになり、結論をまとめるまでには、まだ多くの議論が必要であるが、それなりに参考になる発言が多かった。フリーマップを利用しながら議論し、参加者の思考記録(議論の経緯)を取っているので、それを中間成果として提供する(教育素材 C 参照)。 参加者は、(大学から3 名、産業界から5 名、その他2 名の)10 名、座長は中鉢欣秀氏(産業技術大学院大)であった。 グループD の討議 “実習支援としての教育素材のあり方”という課題について、実務経験がない初心者に理解してもらうために、どのような教材を提供すればよいかを議論することになった。参加者の思いの共有に時間がかかり、テーマを絞りきれないまま時間切れとなっている(論議不十分で継続審議を希望している)。テーマからは少し外れた部分もあるが、教育のソモソモ論に関する議論の一端をお見せしたい(思いの共有としての議論参照)。 参加者は 11 名(大学等から5 名、産業界から5 名、その他1 名)で、座長は榎田由紀子氏(CIJ)であった。 全体討論(1) “要求分析・獲得と必要な教材”及び“必要な教育素材”のグループ討議において、足りなかった課題、継続すべき課題を抽出するために、松澤芳昭氏(静岡大学)が座長となり、参加者全員で討論を行った。テーマに関係する具体的な事例紹介もあり、活発な議論が重ねられた。 議論の結果、新たな課題として、“生の教材の本質は何か”、“失敗例をどのように出すか”が浮上した。また、継続課題として、グループB、C、D のテーマについては、さらに議論を深めることが期待された。 2つの講演から学ぶこと、そして全体討論への発展 山縣いつ子氏による“キャリアデザインと就職活動支援”は、何故、キャリアデザインが必要になったかを考える機会を与えたといえよう。さらに、教育現場が抱える悩みと“学生たちへのメンタルサポートの必要性”に関連して、教室外での教師の活動の重要性を改めて感じさせられた。“自己尊重感を高めるとは?”の話題でも視野を広めることができた。(「キャリアデザインと就活支援」資料参照) 松田晋氏による“ストレス対応とメンタルケア”では、企業でも避けて通れなくなったメンタルケアの問題に如何に取り組めるのか?に関して、分析事例が紹介された(「メンタルヘルスの現状と実際の対応事例」資料参照)。先輩として、あるいは上司として、ストレスを軽減するためにどうすればよいかを考えるキッカケが与えられた。 この 2 つの話題は、“キャリアデザイン教育、メンタルケア、ストレス”の視点で日頃抱えている悩みや対応のし方に繋がり、全体討論でさらに深められた。 “大学教育で対応できる企業のメンタルケアとは?という全体討論での先輩たちの発言には含蓄のある言葉が多く、いろいろな視点で教訓を得ることができた。座長の石井信明氏(文教大学)の記録の中から幾つかを再掲しておこう。 ・ 企業にストレス早期発見の仕組みがあるのは、“個々の社員のパフォーマンス低下が及ぼす影響にとどまらず、ストレスを抱える部下をもつマネジャーのパフォーマンス低下が業績に与える影響を軽減する狙いがある”という理由による。 ・ ICT がストレスに与える影響としては、メール主体のコミュニケーションに対する不安、ICT企業における将来に対する不安があるのではないか。 ・ 日頃から、face to face のコミュニケーションが重要である。 ・ メンタルケアで重要なことは、休職後の職場への復帰での再発ケースが多いことへの対応である。 ・ 勤務時間の管理、仕事の内容、本人への十分なカウンセリングに関しては、先輩たちから多くの経験例が語られた。 印象的な言葉として、“真のプロは厳しいストレスを克服できる者しかなれない”と“ストレスは人生のスパイスである”があったが、これを重く受け止めたい。企業でのストレス対応とメンタルケアの仕組みが、大学でどのように取り入れられるかはこれからの課題といえよう。終わりに FD キャンプ2011 は、新たな課題に対しても多様な議論を展開して幕を下ろした。会員の質が年々向上していることを実感するとともに、今年の成果を、コンソーシアムの今後の活動に反映したいと考えている。分析能力を高める教育とその素材に関する議論はさらに継続することが必要であろう。 気づきシートには、“ドメイン特有の事柄をどの程度織り込むか考えたい”、“教育素材をどう活用するのか考える必要がある”、“学生向きの簡便な要求分析のチェックリスト教材を開発してはどうか”などのメッセージを受け取った。次年度の FD キャンプに向けて、多くの関係者の協力を期待したい。 参加者の皆様、座長の皆様、2 日間にわたって有意義な議論を展開していただき、ありがとうございました。会場を提供いただいた東京工科大学と会場の整備に協力いただいた教職員及び学生の皆様に心より感謝いたします。 FD キャンプ2011プログラム
活動実績 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||